第10章 活動・運動を援助する技術
問  題
正解
解  説

■看護婦1人で患者をベッドの上方へ移動させるとき、患者の膝関節を屈曲させる理由はどれか。
  1.支点と力点との距離を短くする。
  2.患者とシーツの摩擦抵抗を小さくする。
  3.患者の重心を高くする。
  4.看護婦と患者の距離を近づける。

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1. (×) この場合、支点は看護師自身であり、力点は患者の体に差し入れた両上肢である。膝関節を立てることは、支点と力点の距離を短くするのではなく、生じるエネルギーを大きくするためである。また、膝関節を立てることで患者の踵が支点となり、患者自身の力を利用することができる。
2. (○) 患者の膝関節を屈曲することで基底面が小さくなり、患者とシーツの摩擦抵抗は小さくなる。また下肢に力の入る患者であれば、膝関節を屈曲して足底部に力をかけてもらい、患者の力を利用した上方への引き上げが可能である。
3. (×) 患者の重心は骨盤部にあり、膝関節を屈曲させることが重心を高くすることではない。
4. (×) 看護師と患者の距離が近づくためには、看護師はできるだけベッドに近づき、両上肢を深く患者の体の下に差し入れることが必要である。

体位変換のポイントは、看護師はできるだけ患者に近づくこと(てこの原理)、患者は基底面が小さくなるような体位をとることなどがあげられる。設問では患者の膝関節を屈曲し、看護師の片方の上肢は、肘関節で患者の後頭部を支えるように反対側の腋窩に回し、他方の上肢を大腿中央部の下に深く差し入れ、引き上げる方法であると考えられる。現在、ベクトルの法則を利用した、①患者の上半身でつくられた対角線の延長上に自分の左膝を置き、左手は肩甲骨下部を支える、②患者は胸の上で腕を組み、看護師の右手は患者の右肘を体幹に押さえつけながら持つ、③上半身を看護師の左膝の上に持ち上げ、体軸の方向に沿って一気に引き上げる方法が、看護師への負担の少ない方法として普及している。

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