段階 |
時間 |
指 導 内 容 |
指 導 方 法 |
留 意 点 |
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導入 |
5分 |
□学習目標の提示 |
板書(授業終了まで消さない)
学習目標
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1. |
問診の重要性を理解し,実施できる. |
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2. |
一般状態とバイタルサインの関連を理解する. |
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3. |
バイタルサインの正確な測定方法を理解し,実施できる. |
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4. |
得られた情報から対象者の状態を判断することができる. |
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第1
段階 |
10分 |
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発問
○ |
1回目の講義で学んだフィジカルアセスメントとは何か確認する. |
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板書
○ |
アセスメントの方法 |
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・ |
頭尾法(head to toe approach):頭から足に向けて,頭・顔・胸腹部・筋骨格系・神経系の順に,一緒にアセスメントできることをまとめながら実施する.腹部のアセスメント順序は,問診→視診→聴診→打診→触診とする(打診や触診により腸の動きや腸音が影響されるため).その他の部位のアセスメントは,問診→視診→触診→打診→聴診の順で行う.
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・ |
外表的なところから深部の観察へ:問診・視診・触診等の方法を用いながら,五感を働かせてアセスメントを実施する.その次にフィジカルアセスメント物品を用いて,より詳細な観察を行う.また,対象者が気にしている異常部位を問診・視診した後,その周囲の異常ではない部位のアセスメントを実施してから,気になるところのアセスメントを詳細に実施する. |
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説明
○ |
対象者の負担を最小限にし,かつ効果的な情報収集をするために,対象者の状況に応じた方法について事前に考えておく. |
○ |
準備する物品やアセスメント項目(順序)を携帯用メモに記入し,漏れのないようにする.その際,部位ごとにアセスメント項目をまとめておくと,対象者に何度も同じ体位をとってもらうことなく順序よく実施できる. |
○ |
すべての対象者の血液,体液,分泌物,排泄物,傷のある皮膚および粘膜に接触する,あるいは接触する可能性のある場合,手袋・マスク・ガウンなどで感染予防対策を行う必要がある.スタンダードプリコーション(標準予防策)に沿って,手袋やマスクを準備する.場合によっては,ガウンや眼鏡シールド等も感染予防対策として追加準備する. |
○ |
所要時間を短くするよう工夫する.対象者と初対面の場合は,問診15分程度,頭尾法で45分程度が目安とされているが,対象者の負担軽減のため短時間で実施できることが望ましい. |
○ |
守秘義務を遵守し,個人情報の保護を念頭に置き確実に行う. |
○ |
アセスメント実施中は,露出を最小限にする,手や肌に触れる使用物品を温めておく,声掛けをしながら進めるなど,看護師として対象者への身体的・精神的負担をできるだけ軽減するための配慮が常に必要である. |
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第2
段階 |
10分 |
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説明
○ |
フィジカルアセスメントは聞き取り調査と系統別の問診を除き,さまざまな器具を活用し実施する. |
○ |
必要物品はあらかじめ準備しておき,点検を済ませておく.正確なアセスメントを実施するためには,正確な測定器具が必要である. |
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発問
○ |
テキストの図2.2-1「アセスメント物品の一例」で既に名称と用途を知っているものがありますか. |
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○ |
発問により既習の必要物品や用途については想起のみとし,使用頻度が高いもの,特殊なものなどを中心に説明する. |
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説明
○ |
図2.2-1「アセスメント物品の一例」,図2.2-2「診断セットの内容」の特殊なものについて簡単に説明する. |
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○ |
学生が実際に手で触り,取り扱いを確認していく. |
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板書
○ |
必要物品の使用方法 |
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1) |
聴診器:身体の内部の音を聞くために使用する. |
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2) |
眼底鏡・耳鏡・鼻鏡:眼や耳,鼻といった狭く覗きにくいところの構造を観察するために使用する. |
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3) |
舌圧子:口腔内をくまなく調べるために使用する. |
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4) |
ペンライト・瞳孔スケール:光に対する瞳孔の反射を調べるために使用する. |
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5) |
音叉:聴覚や振動の知覚を調べるために使用する. |
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6) |
打腱器:反射のテストのために使用する. |
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7) |
刷毛やルーレット知覚針,安全ピン:触覚や痛覚のテストのために使用する. |
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8) |
角度計,定規:長さや角度を測定する. |
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9) |
マーキングペン:身体に直接印を付けるための油性ペン. |
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10) |
その他:嗅覚テスト・味覚テスト・嚥下テストなどに使用するものも用途に応じて準備する. |
説明
○ |
何をどのように使用するか,その目的を熟知しておくことが最も重要である.フィジカルアセスメントの実施内容に応じて必要物品を選択できるようにしておく. |
○ |
使用方法が未熟であったり,点検が不十分だと対象者に多大な負担をかけるばかりでなく正確な測定ができなくなる. |
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○ |
聴診器については,バイタルサインの講義で使用しているため既習の知識を活用する. |
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第3
段階 |
20分 |
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板書
○ |
問診とは
対象者の健康上の問題に関する情報(健康歴)を得ることを目的とする |
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ロールプレイ
○ |
問診を体験する.
「一週間前から空腹時の腹痛に気付き,受診行動をとった対象者に問診してみる」(3分) |
○ |
三人一組になり,学生同士で実施.観察者は看護者役,患者役を観察.測定終了後,振り返りを行う. |
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○ |
体験から位置関係,雰囲気,聞き方,話し方など問診の基本的な心がけについて意見が出るよう仕向ける. |
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板書
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1) |
患者役は看護者からどのように尋ねられたか. |
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2) |
看護者はどのような情報を得るために,どのような聞き方をしたのか. |
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3) |
観察者が二人の言動から気付いたことは何か. |
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板書
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1) |
問診をするための環境(雰囲気,場所,位置関係) |
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2) |
挨拶と自己紹介 |
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3) |
聞き方 |
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4) |
話し方 |
説明
○ |
学生の体験から出た意見を板書しながら1)〜4)についての行為を振り返り,質問の仕方,看護者の態度が,対象者に影響を与える. |
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第4
段階 |
20分 |
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説明
○ |
視診は対象者に出会った瞬間から始まる.看護者は,系統的に対象者を視覚化するよう努力する.また,視診と同時に,対象者から生じる音やにおいなども観察する. |
○ |
問診と視診を併せて,必要な情報の約6〜7割を得られるといわれるように,看護者が視診を意識的に行うことは大変重要である. |
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板書・説明
○ |
視診とは
視覚を使って身体を注意深く見て,身体の形態の機能・徴候を観察すること. |
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1) |
観察時のポイント |
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(1) |
照度100〜200 lx以上必要 |
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(2) |
視野を妨げるものは取り去る |
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(3) |
プライバシーに配慮する. |
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(4) |
必要時定規や分度器を用い定量化する. |
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(5) |
身体の観察部位は正中線を基線とし,左右対称性に観察する |
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板書
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2) |
視診で判断できること |
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(1) |
大きさ |
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(2) |
色 |
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(3) |
形(発疹,浮腫,陥没,隆起,びらんなど) |
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(4) |
各部位の位置(身体の正中線の左右対称性) |
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(5) |
可動性(動作,反射,歩行など) |
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(6) |
分泌物 |
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(7) |
深部の観察は,検眼器,耳鏡,鼻鏡などを用いる. |
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演習
○ |
二人一組となり,左右対称で見ることを確認する.さらに診察セットを使用してみる.瞳孔スケールなどを実際に扱ってみる. |
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・診察セットの使い方
・角度計・瞳孔スケール・ペンライトの使用方法確認 |
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説明
○ |
触診は視診により得られたデータの精度を上げるため,自分の両手や片手を用いて行う.触診する部位別に,最も適した手の部位でアセスメントする. |
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板書・説明
○ |
触診とは
触覚を活用し,手で触れ,皮膚や身体各部の形態と機能を査定する. |
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1) |
観察時のポイント |
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(1) |
看護者の手は,手荒れや傷がないよう心がけ,爪を短く切っておく. |
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(2) |
手は実施前に温めておく. |
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(3) |
触診しやすい体位で実施する(どこを触診するのか,どのような体位で実施すると緊張感がとれ,正確な診察ができるか考える→解剖学的知識を活用する). |
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(4) |
体液や粘膜などに接触する可能性がある場合は,感染予防の目的でディスポ手袋を使用する(対象者に説明し,同意を得る). |
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(5) |
圧痛や異常所見のある部位の診察は,必ず最後に行う. |
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板書
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2) |
触診で判断できること |
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(1)大きさ |
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(2)硬さ |
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(3)位置 |
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(4)温度 |
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(5)湿度 |
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(6)運動 |
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演習
○ |
触診の方法 |
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(1) |
表面の触診:皮膚表面の触診 |
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(2) |
浅い(表在性)触診:観察する部位に軽く圧をかけて1〜2cm押し下げ,圧痛,温度,湿度,拍動,弾性,表在性腫瘍などを観察する. |
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(3) |
深い触診(深達性):両手または片手の手掌を使い3〜5cmの深さまで陥没させ,肝臓や腎臓など,腹部の深部臓器を触診する. |
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上記の(2)と(3)を二人一組となり,演習室で体験する.
(2)については大腸(結腸)の触診
(3)は肝臓の触診.テキストP.15 図2.4-1「浅い触診と深い触診」を確認し,実施してみる. |
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□ |
打診 percussion
1)観察時のポイント
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板書・説明
○ |
打診とは
皮膚の表面を叩いてその下にある臓器に振動を与え,そこから発せられる音や振動から,臓器の内部の様子や異常の有無,大きさ,位置などを査定する. |
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1) |
観察時のポイント
正しく打診するためには |
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(1) |
利き手の示指,中指で叩く. |
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(2) |
視診,触診の結果から,重点的に打診する部位を決める. |
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(3) |
指の爪を短く切り,正しい叩き方をマスターしておく. |
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提示
→ |
テキストP.16 表2.4-1「打診音の種類」 |
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2) |
打診で判断できること |
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・ |
胸部や腹部の臓器や組織の大きさ,密度,洞,臓器の圧痛など |
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<打診の種類> |
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a. |
直接打診法:直接,体表面を1指または2指で叩く. |
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b. |
間接打診法:(テキストP.16 図2.4-2「間接打診法と叩打法」参照) |
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・ |
利き手でない方の手を過伸展し,中指の指間関節部中指のみ皮膚に当てる.その他の指は皮膚に触れない. |
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・ |
利き手の中指1本(または示指と中指の2本)を屈曲し,手首にスナップを利かせ,片方の中指の節間関節部(打診板)に直角に素早く打ちあてる. |
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c. |
叩打法:軽く握りこぶしを作り,その側面で,皮膚に当てたもう一方の手背を叩く.目的は,組織を振動させ,臓器の疼痛,圧痛の状態や打診音の調子,強度,音質などを評価する. |
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演習
○ |
テキストP.16 図2.4-2「間接打診法と叩打法」を参照しながら,間接打診法について説明し,体験する. |
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・ |
間接打診法の指の使い方,音の確認,音の違いの意味について確認する. |
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・ |
オーバーヘッドテーブルや床頭台,黒板などを打診してみる. |
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・ |
学生二人一組で音の違いを確認し,指の使い方が正しいか教員が確認する. |
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□ |
聴診 auscultation
1)観察時のポイント
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板書・説明
○ |
聴診とは
対象者の身体から発生する音を自分の耳や聴診器を用いて聴くことで,体内の状況を調べることである. |
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1) |
観察時のポイント |
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(1) |
静かな環境で行い,聴診器を正しく使う. |
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(2) |
イヤーピースは自分の外耳道に適したサイズのものを用い,導管は35cm前後(30〜36cm)のものを用いる. |
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(3) |
聴診器のヘッドを温めておく. |
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(4) |
両耳管は鼻に向かってわずかに角度がついているので,イヤーピースは前側に向けて挿入する. |
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(5) |
聴診器のヘッドは利き手の第1〜3指で軽く保持し,皮膚に密着させるように当てる. |
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(6) |
室温を整える. |
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(7) |
正常音を聴取し,確認しておく |
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○ |
テキストを参照しながらアンダーラインを引き,説明する. |
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2) |
聴診で判断できること |
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(1)腸音 |
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(2)呼吸音 |
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(3)心音 |
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(4)血管音 |
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<膜側> |
腸音,肺音,正常心音のような高調音(高周波数) |
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<ベル側> |
血管音や異常心音のような低調音(低周波数)をアセスメントする. |
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演習
○ |
イヤーピースの正しい装着の方法,膜側,ベル側の使い方を確認する. |
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第5
段階 |
20分 |
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説明
○ |
看護に必要な情報を得るための枠組み(アセスメントツール)を活用しながら,あらゆる技術を活用して,主観的・客観的情報を得る. |
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板書
○ |
一般状態とは
呼吸,脈拍,血圧,体温,意識状態,尿量,栄養状態などの全身所見. |
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→ |
テキスト P.19 表2.5-1「バイタルサインの測定:意識レベル(consciousness level)」 |
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テキスト P.20 表2.5-3「バイタルサインの測定:脈拍(pulse)」 |
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テキストP.22 表2.5-5「バイタルサインの測定:呼吸(respiration)」 |
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テキストP.23 表2.5-7「バイタルサインの測定:体温(body temperature)」 |
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テキストP.26 表2.5-9「バイタルサインの測定:血圧(blood pressure)」 |
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○ |
解剖生理学や,基礎看護技術で習得したバイタルサインについて想起させる. |
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2) |
バイタルサインを測定し,アセスメントしてみる |
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ロールプレイ
○ |
バイタルサインが表す意味について,確認後,ロールプレイをしてみる. |
○ |
三人一組になり,学生同士で実施.観察者は看護者役,患者役を観察.測定終了後,3人で振り返りを行う.(自由討論) |
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まとめ |
5分 |
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説明
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○ |
講義内容および課題について質問がないか確認する. |
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課題
1. |
本時の講義をふまえて,身近な家族の一般状態の情報収集とバイタルサインの測定を行う. |
2. |
次回の講義までに,テキスト(P.30〜37)を読んでくる. |
3 |
小テストについて(実施する場合)
次回の講義のはじめに,理解度確認のための小テストを実施することを予告する. |
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