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7回 授業案:第6章 性・生殖器系腫瘍と 看護
学習項目
1. 病 態および治療
1) 子 宮頸癌
(1) 定義・病理
(2) 疫学
(3) 症状
(4) 検査
(5) 治療
2) 子 宮体癌
(1) 定義
(2) 疫学
(3) 症状
(4) 検査
(5) 治療
3) 卵 巣癌
(1) 定義
(2) 疫学
(3) 症状
(4) 検査
(5) 治療
4) 乳 癌
(1) 疫学
(2) 理学所見・診断
(3) 分類
(4) 特異的乳癌
(5) 治療
5) 前 立腺肥大症
(1) 定義・病理
(2) 疫学・病因
(3) 自覚症状
(4) 検査
(5) 治療
6) 前 立腺癌
(1) 定義・病理
(2) 疫学・病因
(3) 自覚症状
(4) 検査
(5) 治療
7) 精 巣腫瘍
(1) 定義・病理
(2) 疫学・病因
(3) 自覚症状
(4) 検査
(5) 治療
(6) 予後
2. 婦 人科癌の治療後の合併症と機能障害
1) 静 脈血栓塞栓症
2) 下 肢のリンパ浮腫
3) 術 後に発生する障害
(1) 排尿障害
(2) 直腸機能障害
(3) 生殖機能障害
(4) 性機能障害
(5) 卵巣機能障害(更年期様症状)
3. 癌 看護
1) 癌 患者への癌の告知
2) 癌 患者の精神疾患
3) 癌 患者へのアプローチ
4) 癌 の痛みの治療法の基本
5) 手 術後の性生活への影響
6) 化 学療法薬(抗癌剤)の副作用
今回の目標
性・ 生殖器系の腫瘍の主な特徴と治療方法を説明できる.
癌 治療に伴う副作用,合併症について説明できる.
癌 患者の苦悩を知り,看護の役割を考えることができる.
使用する教材・準備物
テキスト: ナー シング・グラフィカ15 健康の回復と看護 内部環境調節機能障害/性・生殖機能障害,メディカ出版
資料映像: 癌患者への癌の告知」「事例で考える病みの軌跡」
パ ワーポイント  
講義の工夫点・留意点
1. 性・ 生殖器系腫瘍の概要と生命・生活への影響をわかりやすく伝える.
2. 性・ 生殖器系腫瘍の検査・治療の内容と方法についてわかりやすく伝える.
3. 性・ 生殖器系腫瘍をもつ患者とその家族の把握と看護援助の視点についてわかりやすく伝える.
講義の評価視点
○学生への評価視点
1. 授 業に対する取り組み姿勢
2. 課 題レポート
3. 3 分の2以上の出席

○教員への評価視点(自己評価)
1. 授 業についての学生の評価(学習目標の到達度,説明のわかりやすさ,配布資料のわかりやすさ,重要ポイントの理解,話す声の大きさやテンポなど)
2. 性・ 生殖器系腫瘍をもつ患者とその家族の看護について考えたこと
3. 性・ 生殖器系腫瘍をもつ患者とその家族の看護がイメージできたか.
学生への自己学習課題
○予習
テ キスト(P.157〜189)を読んでくる.

○復習
1. 以 下の視点について整理する.
1) 性・生殖器系腫瘍をもつ患者とその家族を取り巻く社会環境について(疫学含む)
2) 性・生殖器系腫瘍をもつ患者とその家族の心理について
3) 性・生殖器系の解剖生理と性・生殖器系腫瘍の病態について

段階
時間
指導内容
指導方法
留意点
導入
2 分
学 習目標の提示
板 書
学習目標
1.
性・生殖器系の腫瘍の主な特徴と治療方法を説明できる.
2.
癌 治療に伴う副作用,合併症について説明できる.
3.
癌 患者の苦悩を知り,看護の役割を考えることができる.

説明
学習目標と学習項目を明示した講義資料(レジュメ)を配付し,レジュメに沿って以下の内容を説明する.
学生は講義を聞きながら必要事項を書き込む.
パワーポイントで示した図表は,参考資料として学生に配する.

パワーポイント学習目標
今回の学習を動機づける.
講義終了時,学習の理解度を確認する.
第1
段階
40 分
(10分)
病 態および治療
1.
子宮頸癌
1) 定義・病理
板 書
子宮頸癌の臨床進行期分類
テキストP.160 表6 -2「子宮頸癌の臨床進行期分類」を提示する.

板 書
子宮頸癌の進行期分類(Ib〜IIIb)
テキストP.160 図6 -3「子宮頸癌の進行期分類(Ib〜IIIb)」を提示する.

説明
子宮頸部の癌で,進行の度合いによって,0期からIV期に分類される.
好発部位は,子宮頸部扁平円柱上皮境界である.
子宮頸部癌の発展と進展にHPV感染が関与している.
HPV感染者は非感染者と比較し,扁平上皮癌発生のリスクが20倍,子宮頸部上皮内腫瘍発生のリスクが30倍高 いと報告されている.リスク因子としては,喫煙が挙げられる.
予防因子としては,ビタミンC,ビタミンE,葉酸の摂取がある.

パワーポイント子宮頸癌の臨床進行期分類


パワーポイント子宮頸癌の進行期分類 (Ib〜IIIb)
2) 疫学
板 書
各段階の子宮頸部異形成が癌に遷移するまでの期間
テキストP.159 図6 -2「各段階の子宮頸部異形成が癌に遷移するまでの期間」を提示する.

説明
2001(平成13)年の統計では,子宮頸癌の好発年齢は40歳代である.高齢化にかかわらず,若年層へ広がり つつある.
40歳以下の子宮頸部浸潤癌の人口10万人比の罹患率が1982(昭和57)〜86(昭和61)年で10であっ たのが,1992(平成4)〜96(平成8)年は16に増加している.
2001(平成13)年では,Ia期11.6%,IIb期18.7,II期13.4,III期8.8,IV期4.2となっている.

3) 症状
説 明
多い症状は性器出血で,性交後の出血や月経間の不正出血で来院する場合が多い.
薄い血の混じったにおいのあるおりもので来院することもある.

4) 検査
説 明
英国の子宮頸癌の検診は,浸潤癌の罹患率を35低下させ,死亡率を40%低下させたと報告されている.
まずは,細胞診,正確な診断は生検による組織標本からなされる.
2009年から細胞診は,ベセスダシステム2001の報告様式を採用することになった.
腫瘍マーカーは,リンパ節転移を含めた癌の広がりの把握,治療効果や予後の判定に有用である.

検 査の重要性や,アメリカ産婦人科学会の推奨する検診について説明する.
5) 治療
説 明
標準治療は,手術治療と放射線治療の二つである.
手術で子宮頸癌を完全に摘出できれば根治が可能である.妊孕性温存を希望する場合は,0期の上皮内癌に準じて子 宮円錐切除を行う.Ia2期,Ib期〜IIb期の場合は,広汎子宮全摘出術を施行する.
扁平上皮癌であれば,状況によって放射線治療で根治が期待できる.
化学療法は,単独では根治は期待できず,化学療法併用放射線療法が行われる.化学療法の薬剤として,CDDP (シスプラチン)がよく用いられる.また近年,分子標的薬が注目を浴びている.

(10 分)
2.
子宮体癌
1) 定義
板 書
子宮体癌のMRI画像
テキストP.163 図6 -4「子宮体癌のMRI画像」を提示する.

説明
子宮体部の癌である.
危険因子は,肥満,未産(不妊),遅い閉経と一般的に指摘されている.

パワーポイント子宮体癌のMRI画像
2) 疫学
説 明
40歳未満の発症率は5〜6%.
中高年特に50歳以降の発症が多い.
子宮体癌の子宮癌全体に占める頻度は,1983(昭和58)年から2001(平成13)年で15.2%から 42.2%へと増加した.
子宮体癌の大多数は腺癌である.そのうち,約90%は類内膜癌である.
子宮体癌は,I型(エストロゲン依存型)とII型(エストロゲン非依存型)に大別され,I型は閉経期ごろまでの 発症が多く,子宮体癌の約70%を占める.一方,II型は閉経期以降の発症が多い.

3) 症状
説 明
90%に不正出血を認める.

4) 検査
説 明
子宮体癌検診対象者は,最近6か月以内に不正出血の症状をもつ
1. 50 歳以上
2. 閉 経期以降
3. 未 妊婦で月経不規則
  のいずれかに該当する女性である(老人保健法による健康診査マニュアルより).
わが国の子宮体癌の内膜細胞診陽性率は79〜95%,偽陰性率は13%である.
確定診断は,一般的に子宮内膜組織診である.
経膣超音波断層法の子宮内膜の厚さの評価も補助診断として有用である.
腫瘍マーカーは,リンパ節転移を含めた癌の進展度の把握,治療効果の判定,予後判定や再発の早期発見に有用であ る.

5) 治療
説 明
治療の基本は進行度の確定目的を含めた手術療法である.
進行期Ic期以上では術後補助療法が追加治療される.術後補助療法には放射線療法や化学療法が選択されるが,確 定されたものはない.
若年子宮体癌では,子宮内膜掻爬と高用量黄体ホルモン療法を併用する子宮温存療法が試みられている.
5年生存率はI期82.2%,II期73.6%,III期43.1%,IV期12.3%である(2008年日本産科 婦人科学会子宮癌委員会報告).

(10 分)
3.
卵巣癌
1) 定義
説 明
卵巣に発生する癌である.
遺伝的要因の寄与は約22%.
危険因子は,肥満,妊娠や分娩数が少ないこと,不妊傾向,エストロゲン単独療法,家族歴,動物性脂肪の摂取が多 いことなどがある.

2) 疫学
説 明
年齢とともに増加傾向にある.
上皮性卵巣癌の好発年齢50歳代,胚細胞腫瘍は若年層に好発する.
人口10万人比の罹患率は,1975(昭和50)年は4.5だったが,1998(平成10)年には8.3,死亡 率は1950(昭和25)年の1.2が2000(平成12)年には4.3と,ともに増加している.
表層上皮性・間質性腫瘍や胚細胞腫瘍など14に分類される.

3) 症状
説 明
上皮性卵巣腫瘍のうち,漿液性腺癌は卵巣癌の40〜50%を占める.
粘液性腺癌は5〜15%を占め,肉眼的に多房性で,粘液性のゼリー状液体で満たされている.
類内膜腺癌は卵巣癌の10〜15%を占める.
胚細胞腫瘍は全卵巣癌の約5%である.この腫瘍は,若年層に好発し,片側性にみられる特徴があり,早期発見,早 期治療が行われれば,治癒可能である.

4) 検査
説 明
超音波検査と腫瘍マーカーとを組み合わせた検診が試みられているが,適切な検診システムは確立されていない.
間接診断は,内診,画像診断(超音波検査やMRI検査),腫瘍マーカーなどである.
腫瘍マーカーは,リンパ節転移を含めた癌の進展度の把握,治療効果や予後の判定,再発の早期発見に有用である.

5) 治療
説 明
1997(平成9)年に日本産婦人科学会と日本病理学会により『卵巣腫瘍取扱い規約 改訂第2版』が出され,こ れに基づいた診断・治療が行われている.
治療の柱は手術療法と化学療法である.ただし,化学療法のみで治療するのは現在のところ不可能で,手術療法が基 本的治療手段である.
標準的化学療法は,タキサン製剤とプラチナ製剤の併用療法で,代表的なものとしてパクリタキセルとカルボプラス チンのTJ療法がある.
5年生存率は,I期92.6%,II期70.1%,III期37.5%,IV期25.5%である.

(10 分)
4.
乳癌
1) 疫学
説 明
女性の癌罹患率の第1位である.
男性にもごくわずか(全乳癌の0.4%)発生する.
女性の癌死亡率の第4位である.
危険因子は,高齢,未婚,低初潮年齢,高閉経年齢,高齢初産,授乳経験なし,肥満,良性乳腺疾患の既往,乳癌家 族歴,本人の乳癌既往歴である.

2) 理学所見・診断
板 書
各箇所ごとの乳癌発生頻度
テキストP.168 図6 -5「各箇所ごとの乳癌発生頻度」を提示する.

説明
症状がないといっても過言ではない.
乳房腫瘤に気づいて来院する患者が90%を占める.
乳汁分泌は,片側単孔性の場合のみ乳癌の可能性がある.
皮膚症状は出にくく,わかりにくい.症状が出る場合は,えくぼ症状,皮膚萎縮,皮膚潰瘍の順で進行していく.
腫瘍切除生検が最も正確な診断であり,次に針生検がある.
検査はマンモグラフィーと超音波検査が代表的である.
高齢者ではマンモグラフィー,若年者では超音波検査が有用である.

パワーポイント各箇所ごとの乳癌発生頻度
板 書
乳 癌の触診の体位
テキストP.168 図6 -6「乳癌の触診の体位」を提示する.

パワーポイント乳癌の触診の体位
3) 分類
板 書
乳癌のTNM病期分類
テキストP.169 図6 -7「乳癌のTNM病期分類」を提示する.

説明
小葉癌(浸潤癌と非浸潤癌)と乳管癌(浸潤癌と非浸潤癌)がある.

パワーポイント乳癌のTNM病期分類
4) 特異的乳癌
説 明
パジェット病は,乳頭のかゆみや灼熱感を主訴とし,乳頭上皮のびらん,潰瘍を呈する.乳頭にのみ病変が限局して いる場合は,予後がよく,乳房に腫瘍を伴う場合は予後が悪い.多くは,高分化浸潤乳管癌で,乳癌全体の1%を占める.
炎症性乳癌は,乳房全体が急激に大きくなり,発赤,熱感,浮腫を示し,時に疼痛を伴う.進行が早く,化学療法, ホルモン療法,放射線療法が行われる.全乳癌の3%以下で,最も悪性度が高く,早期にリンパ節転移を起こしやすい.
両側乳癌は50歳未満の女性に多く,同時に両側に発生する率は約1%以下で,異時的に発生する率は5〜6%であ る.

5) 治療
説 明
転移した乳癌のホルモン治療は,エストロゲン受容体陽性の場合60%,プロゲステロン受容体陽性の場合80%が 有効である.
受容体陽性の患者にはホルモン治療,陰性の患者には化学療法が推奨される.
エストロゲン受容体陽性の場合,予後が良い.
分子標的治療薬トラスツズマブはシグナル伝達阻害薬で,癌の増殖を抑える新薬である.日本では転移性乳癌の治療 にのみ認められている.
根治治療には,乳房温存手術,胸筋温存乳房切除術,胸筋合併乳房切除術があり,多くは腋窩リンパ節郭清を行う.
化学療法には,CAF療法(シクロホスファミド,アドリアマイシン,フルオロウラシル),CMF療法(シクロ ホスファミド,メトトレキセート,フルオロウラシル)があり,タキサン製剤(パクリタキセル,ドセタキセル水和物)の併用も施行される.
比較的化学療法に反応する腫瘍で,約60%の奏効率が得られている.
放射線治療は,乳房温存療法で術後の局所残存癌に対する治療に使用される.再発乳癌の脳転移では,ガンマナイフ (集光照射)によるピンポイント治療が多い.
予後は病期決定が重要であり,5年生存率は病期によく相関している.

第2
段階
20分
(10分)
5.
前立腺肥大症
1) 定義・病理
板書
前立腺の矢状面模式図
テキストP.174 図6 -9「前立腺の矢状面模式図」を提示する.

説明
尿道周囲を取り巻く移行域の前立腺上皮と間質細胞において細胞の大きさは変わらず数が増加し,臓器の容量が増え,病 理学的に過形成した病態を前立腺肥大症という.

パワーポイント前立腺の矢状面模式図
2) 疫学・病因
説 明
病因についてはいまだ不明である.
アメリカの報告では,40歳代20%,50歳代40%,60歳代70%,70歳代80%に肥大結節がみられ,男 性の加齢現象の一つとも考えられている.

3) 自覚症状
板 書
国際前立腺症状スコア(IPSS)と排尿症状のQOL
テキストP.175 表6 -7「国際前立腺症状スコア(IPSS)と排尿症状のQOL」を提示する.

説明
排尿困難を主訴とする.
膀胱刺激症状(残尿感,頻尿,尿意切迫),尿道閉塞症状(尿線途絶,尿勢低下,努責排尿),夜間排尿という7項 目の国際前立腺症状スコア(IPSS)で,排尿困難の客観的評価をする.

4) 検査
板 書
直腸診
テキストP.175 図6 -10「直腸診」を提示する.

説明
前立腺特異抗原(PSA),直腸診,超音波検査(経腹的走査法,経直腸的走査法),尿流動態検査(尿流検査,残 尿量測定,膀胱内圧測定),X線検査〔排泄性尿路(腎盂)造影,逆行性尿道膀胱造影〕,検尿,血液生化学検査が行われる.
前立腺特異抗原(PSA)では,前立腺癌の除外診断のために欠かせない.
超音波検査では,膀胱内に十分尿がたまった状態で検査すると,膀胱と前立腺の両方がはっきりとわかる.腎臓の異 常も観察できる.

パワーポイント直腸診
5) 治療
説 明
第一病期(刺激期)では,排尿困難は軽度で,夜間頻尿や排尿時違和感などの刺激症状が現れ,薬物療法を行う.
第二病期(残尿期)では,排尿に要する時間が延長し,終末時滴下などの排尿困難が増悪,時に尿閉をきたすため, 薬物療法に加え,残尿が100mL以上続く場合は手術を考慮する.
第三病期(完全尿閉期)では,奇異性尿失禁がみられ,水腎症から腎機能低下,さらには腎不全に至るため,全身状 態に応じた治療を行う.
薬物治療は,α1ブロッカーが第一選択となる.
手術には,内視鏡手術と開放手術(前立腺被膜下摘除術)があり,内視鏡手術には,経尿道的前立腺摘(切)除術 (TURP),経尿道的前立腺電気蒸散術(TVP)がある.

(10 分)
6.
前立腺癌
1) 定義・病理
板 書
前立腺の矢状面模式図(再掲)
テキストP.174 図6 -9「前立腺の矢状面模式図」を提示する.

説明
70%が前立腺末梢域,20%が移行域,10%が中心域から発症する.
大部分が腺癌である.
転移は,リンパ節転移以外に骨転移が多い.
骨転移は造骨型が多い特色がある.

パワーポイント前立腺の矢状面模式図(再掲)」
2) 疫学・病因
説 明
高齢者に多いが,病因は不明である.

3) 自覚症状
説 明
前立腺癌特有の自覚症状はない.
初期から中期では,前立腺肥大症の症状が出現.進行して肉眼的血尿や膀胱刺激症状が生じる.
最近では,健康診断や人間ドックの検査で前立腺特異抗原(PSA)が使用され,無症状での発見が増えている.

4) 検査
板 書
前立腺癌のMRI画像
テキストP.178 図6 -11「前立腺癌のMRI画像」を提示する.

説明
前立腺肥大症と同様の諸検査を行う(前立腺特異抗原,直腸診,超音波検査等).
経直腸的超音波検査ガイド下で経直腸的に生検を行う.
癌の浸潤や転移の有無の検索は,CT,MRI,骨シンチグラフィーで調べる.

パワーポイント前立腺癌のMRI画像
5) 治療
板 書
前立腺癌の臨床病期と治療
テキストP.179 表6 -8「前立腺癌の臨床病期と治療」を提示する.

説明
臨床病期により,大まかな方向が決まるが,患者の大多数が高齢者であるため,全身状態や治療によるQOLの変化 を考慮し,治療を行う.
外科的去勢術やホルモン療法がある.

パワーポイント前立腺癌の臨床病期と治療
7.
精巣腫瘍
1) 定義・病理
説 明
約95%が胚細胞由来である.
病理組織学的分類では,臨床的に精上皮腫(セミノーマ)と非精上皮腫(非セミノーマ)に大別できる.
初診時精上皮腫(セミノーマ)の20〜30%,非精上皮腫(非セミノーマ)60〜70%で転移がある.
転移はまず後腹膜腔リンパ節に生じ,肺,肝,脳へは血行性に転移する.

2) 疫学・病因
説 明
25〜34歳の青壮年に最も多い.
停留精巣に発生しやすい.
病因は不明である.

3) 自覚症状
説 明
無痛性陰嚢内腫瘤が最も多い.
約10%は転移巣由来の症状で発見される.

4) 検査
説 明
触診,透光性,超音波検査,腫瘍マーカー,X線撮影,CT,MRIが行われる.
転移の有無の確認は,胸部X線撮影,腹部CT,MRIで検査する.
生検は,血行性転移を生じる危険があるため禁忌である.

5) 治療
説 明
高位精巣摘除術では,摘出標本の病理組織学的検査により組織型,転移の有無を調べ,検査結果と併せて治療方針を 決めて行われる.
精上皮腫(セミノーマ)の臨床病期Iでは,後腹膜腔リンパ節へ予防的照射を行う.
精上皮腫(セミノーマ)の臨床病期II・IIIでは化学療法を行う.
非精上皮腫(非セミノーマ)の臨床病期Iでは,厳重な経過観察,予防的化学療法,後腹膜腔リンパ節郭清術のいず れかを行う.
非精上皮腫(非セミノーマ)の臨床病期II・IIIでは化学療法と残存腫瘍摘除術を行う.

6) 予後
説 明
精上皮腫(セミノーマ)全体の5年生存率は90%以上で,非精上皮腫(非セミノーマ)では70〜80%である.

第3
段階
10 分
婦 人科癌の治療後の合併症と機能障害
1.
静脈血栓塞栓症
板 書
確認事項
1. 血 管が破れた際,血液が凝固して血栓がつくられる.血栓は,血管を修復して止血する働きがある.しかし,動脈硬化や手術の影響などで,血管が破れていなくて も血栓が生じ,血管を塞いでしまうことがある.
2. リ ンパ浮腫には先天的なものと,後天的なものとがある.後天的なものは,乳癌,子宮癌,前立腺癌などの手術で,リンパ節が切断されるなどして起こる場合が多 い.
3. 婦 人科癌の術後または治療後に起こる機能障害は,下肢の血管血流障害,下肢リンパ浮腫,排尿機能障害,腸管運動障害,生殖機能障害,性機能障害,卵巣機能障 害(更年期様症状)などで,治療による合併症ともいえる.

板 書
婦人科手術における静脈血栓塞栓症の予防
テキストP.181 表6 -10「婦人科手術における静脈血栓塞栓症の予防」を提示する.

説明
一般的な外科手術の合併症以外に,婦人科癌患者周手術期は易血栓形成状態と考えられ,深部静脈血栓症(DVT) から肺血栓塞栓症(PTE)に及ぶような合併症のリスクは高い.このような血栓症を総称して静脈血栓塞栓症(VTE)と呼ぶ.
2004(平成16)年には,「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」が作成され ている.
深部静脈血栓症の予防として,早期離床,脱水予防,下大静脈フィルター,早期離床のための疼痛コントロールが重 要である.

パワーポイント確認事項
















パワーポイント婦人科手術における静脈血栓塞栓症の予防
2.
下肢のリンパ浮腫
板 書
下肢リンパ浮腫の臨床的進行期分類
テキストP.182 表6 -11「下肢リンパ浮腫の臨床的進行期分類」を提示する.

説明
子宮頸癌,子宮体癌および卵巣癌などの治療に際して引き起こされる合併症である.
リンパ管の循環障害により組織間隙に蛋白質を含むリンパ液が貯留し,水分も過度に蓄積した状態のことである.

板 書
複合的理学療法リンパ浮腫の治療
テキストP.182 表6 -12「複合的理学療法リンパ浮腫の治療」を提示する.

パワーポイント下肢リンパ浮腫の臨床的進行期分類








パワーポイント複合的理学療法リンパ浮腫の治療
3.
術後に発生する障害
1) 排尿障害
説 明
術後の排尿障害は,主として骨盤自律神経の切断による神経因性膀胱であるが,膀胱の剥離,膀胱の位置の変化など も関与すると考えられる.
術後照射後の尿失禁は,照射により排尿筋が線維化を起こし,膀胱容量の減少が蓄尿時の膀胱内圧上昇につながり起 きやすくなると考えられる.

2) 直腸機能障害
説 明
術後便秘は30%前後に存在し,手術侵襲によるものとみなされる.
放射線治療後は,照射による粘膜障害のため便秘よりも下痢を生じやすい.

3) 生殖機能障害
説 明
婦人科の悪性疾患では多くの場合,治療によって子宮または卵巣が摘出される.
臨床進行期分類によって妊孕性温存は可能である.

4) 性機能障害
説 明
精神的影響,膣の短縮の影響,エストロゲン低下の影響が原因であるといわれている.

5) 卵巣機能障害(更年期様症状)
説 明
卵巣摘出あるいは放射線治療による卵巣機能の廃絶または障害で起きる症状である.

第4
段階
15 分
癌 看護
1.
癌患者への癌の告知
板 書
確認事項
1. 癌 患者への看護では特に,身体的症状へのケアだけでなく,精神面でのケアも求められ,また患者自身だけでなく家族への対応も重要となってくる.
2. 癌 への化学療法には激しい副作用を伴うものがある.
3. 一 般的な疾患の看護以外に癌患者への看護に特徴的なものとして,癌を疑われ,または癌を告知されたときから生じる不安や抑うつなどに対するケアがある.この ことは癌患者の家族に対しても考慮される.
4. 末 期になると,癌による多くの苦痛症状が発生する.癌性疼痛治療でも治療しにくい場合もあり,その治療および看護は緩和医療といった独特の医療システムを形 成し,痛みだけでなく精神的なサポートや生活の質(QOL)の向上を考慮に入れた全人的なケアが必要とされる.
5. 手 術や放射線治療後の性生活への影響や化学療法薬の副作用に対して,医師と看護師との一体となったケアが望まれる.

説明
一般的な手術の説明と異なり,よくない知らせを伝える工夫が必要である.

パワーポイント確認事項

板書
癌の告知の6つのステップ
1.ス テップ1(setting)では,告知にふさわしい環境をつくる.
2.ス テップ2(perception)では,患者が病気についてどこまで知っているか確認する.
3.ス テップ3(invitation)では,患者がどこまで情報を望んでいるかを確認する.
4.ス テップ4(knowledge)では,情報の開示,告知を行う.情報の開示では診断とその予後や治療成績が要求されることもある.
5.ス テップ5(explore)では,告知に対する患者の反応に共感的あるいは承認的な発言を使って対応する.
6.ス テップ6(strategy and summary)では,治療方針と治療計画を伝える.

説明
癌の告知を6つのステップで説明する人たちもいる.

パワーポイント癌の告知の6つのステップ」「癌患者への癌の告知
2.
癌患者の精神疾患
板 書
適応障害
テキストP.185 表6-13「適応障害」を提示する.

説明
癌という疾患名は,患者に死の宣告にも似た強い衝撃となる.癌に対し不安を感じるのは当たり前の反応であるが, その反応が一般的範囲を超え,社会生活や治療に影響を与え始めた時には,精神的な治療が必要とされる.
癌患者の罹患する精神疾患のうち最も多いといわれているのは,適応障害である.
せん妄は,身体的な問題が多くなる癌の終末期に多くみられ,軽度の記憶欠損および見当識などの症状に代表され る.

3.
癌患者へのアプローチ
説 明
癌という疾患名は,患者だけでなくその家族にとっても強い衝撃となる.そのため,家族看護としてケアすることが 要求される.
癌患者を抱える家族看護の視点は,
1. 新 婚家族なのか
2. 子 どもはまだ小さいのか
3. 学 校に通っている子どもは自立しているのか
4. 子 どもはすでに親元を離れているのか
5. 老 後の二人だけの生活をしているのか
6. 配 偶者は亡くなり子どもだけなのか
  などである.
終末期の看護としては,まず死を迎えようとしている患者の家族や配偶者の気持ちをくみとることが大事である.

4.
癌の痛みの治療法の基本
板 書
WHO癌疼痛治療法
テキストP.186 表6 -14「WHO癌疼痛治療法」を提示する.

説 明
痛み開始時は,非ステロイド性消炎鎮痛薬やアセトアミノフェンを時間を決めて服用し,痛みが取れなくなった時 は,弱オピオイドを加え,さらに痛みが強くなった時は,強オピオイドに変更する.

板書
1986(昭和61)年のWHOの癌疼痛治療法の三つの基本は,
1. 経 口投与(by the mouth)
2. 時 間を決めて服用する(by the clock)
3. 痛 みの強さに応じて薬を選ぶ(by the ladder)
  である.

パワーポイントWHO癌疼痛治療法









パワーポイントWHOの癌疼痛治療法の三つの基本
5.
手術後の性生活への影響
板 書
アメリカがん協会のパンフレット
テキストP.187 表6 -15「アメリカがん協会のパンフレット」を提示する.

説明
婦人科癌の術後または治療後の性機能障害を,パートナーに認識および理解してもらうことが大事である.
子宮を単純全摘出した場合は,膣上部付近の血流減少が考えられ,子宮頸部や膣での性生活における快感の劣化が予 測される.
広汎子宮全摘出術は膣の短縮を起こし,放射線療法は膣の繊維性硬化を生じさせ,膣が狭くなる.
性の喜びは性交によるものばかりでなく,全人的なものととらえ,性交重視の考え方を変えることで,患者の心の苦 痛を取り除くことができるかもしれない.

パワーポイントアメリカがん協会のパンフレット
6.
化学療法薬(抗癌剤)の副作用
板 書
脱毛への対応
テキストP.188 表6 -16「脱毛への対応」を提示する.

説明
シスプラチン製剤やタキサン製剤といった化学療法薬の中心となる薬剤の有害反応(副作用)は,癌患者の生活を苦 しめる.
シスプラチン製剤の副作用には,骨髄抑制, 消化器症状,腎機能障害,末梢神経障害がある.
タ キサン製剤の副作用には,骨髄障害,末梢神経障害,筋肉痛,関節痛がある.
副 作用に対するケアとして,漢方を含む薬物療法以外に生活での細かい指導が大切である.
た とえば,骨髄抑制時には生もの摂取の注意や排便後肛門をきれいにすること,人混みを避けることなど,末梢神経 障害の時は階 段歩行や熱いものをつかむ時の注意など.

パワーポイント脱毛への対応
板書
感染への対応
テキストP.188 表6 -17「感染への対応」を提示する.

パワーポイント感染への対応
板書
嘔気への対応
テキストP.189 表6 -18「嘔気への対応」を提示する.

パワーポイント嘔気への対応
まとめ
3 分
授 業のまとめ
説明
本 日の学習目標に沿ってポイントを説明する.

課題
以 下の視点について整理する.
1. 性・ 生殖器系腫瘍をもつ患者とその家族を取り巻く社会環境について(疫学含む)
2. 性・ 生殖器系腫瘍をもつ患者とその家族の心理について
3. 性・ 生殖器系の解剖生理と性・生殖器系腫瘍についての病態について

予習
テ キストP.191〜200を読んでくること.