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22回 授業案:第2部 健康的な日常生活行動を促進する援助技術
第10章 活動・運動を援助する技術 (1)
学習項目
1. 活動・運動の意義
1)生理的な意味
2)心理的な意味
3)社会的な意味
2. 活動・運動の生理学的メカニズム
1)運動の神経支配と骨格筋の収縮
2)体位変化とバイタルサイン
3)同一体位と体圧
3. 活動・運動のニーズのアセスメント
1)活動・運動の内容
2)活動・運動の客観的指標
3)活動・運動を阻害する要因
4)活動・運動を充足させるためのフローチャート
4. 活動・運動の障害(看護診断)
5. 援助の方法の選択
1)体位変換における留意点
2)さまざまな場面における体位変換の援助
3)床上運動
4)立位と歩行
5)移動・移送
今回の目標
人間の活動・運動の意義が理解できる.
随意運動の成り立ちが理解できる.
同一体位による身体への影響が理解できる.
運動が人間に与える影響が理解できる.
活動・運動のニーズをアセスメントする方法が理解できる.
活動・運動を促す援助方法を理解できる.
使用する教材・準備物
テキスト: ナーシング・グラフィカ18 基礎看護学 基礎看護技術,メディカ出版
資料: 1.シラバス,2.廃用性症候群について(全身に及ぼす影響)
ビデオ: 車椅子による移動・移送,ストレッチャーへの移動・移送
資料映像: 「体位変換(仰臥位から側臥位への一例)」「人工呼吸器装着患者の体位変換」
パワーポイント
講義の工夫点・留意点
1. 活動・運動を自分の生活や体験から考える.
2. 援助の方法は,ボディメカニクスを想起させながら行うことで,具体的なイメージができる.
講義の評価視点
○教員への評価視点
1. 発問に対する反応・学生の表情
2. 授業の方法(話し方・資料内容・ビデオの使い方)
3. 授業の内容(興味・関心の度合い・量・構成・難易度等)リストを用いて4段階でチェックする.

○学生への評価視点
1. 授業への出席・参加態度
学生への自己学習課題
○予習
テキスト(P.177〜199)を読んでくる.

○復習
次回の演習に向けて,以下の技術に関する手順書(手順・根拠・留意点を含む)を作成し,演習時に持参する.
1. ベッド上方への水平移動
2. ベッド右側への水平移動(看護者1人)
3. 仰臥位から側臥位へ
4. 仰臥位から座位へ
5. 車椅子への移動
6. ストレッチャーへの移動

段階
時間
指導内容
指導方法
留意点
導入
5分
学習目標の提示
資料の配布
資料: 1.シラバス
2.廃用性症候群について(全身に及ぼす影響)

説明
シラバスを配布.今後の授業の進み方,目標,内容を説明する.

資料の配布を行う.
単元の位置づけ,講義の時間数,学習目標,学習内容.
板書(授業終了まで消さない)
学習目標
1.
人間の活動・運動の意義が理解できる.
2.
随意運動の成り立ちが理解できる.
3.
同一体位による身体への影響が理解できる.
4.
運動が人間に与える影響が理解できる.
5.
活動・運動のニーズをアセスメントする方法が理解できる.
6.
活動・運動を促す援助方法を理解できる.

パワーポイント「学習目標
今回の学習を動機づける.
講義終了まで残し,終了時,学習の理解度を確認する.
第1
段階
10分
活動・運動の意義
板書
活動・運動の定義
1. 活動とは
「活発に動いたり,働いたりすること」
2. 運動とは
「時間の経過とともに空間内の位置を変える現象,健康や楽しみのために体を動かすこと」

説明
テキストP.178
活動・運動の定義を説明する.

パワーポイント「活動・運動の定義
生理的な意味
心理的な意味
社会的な意味
発問
生活の中での,活動・運動がどのような意味があると思うか.

説明
返答は,テキストP.178の「1 活動・運動の意義」を使用し説明する.

生活している中での活動・運動の意味を考える.
第2
段階
15分
活動・運動の生理学的メカニズム
1.
運動の神経支配と骨格筋の収縮
板書
ボディメカニクスからの運動
身体各部の骨格筋が神経の働きによって収縮して関節を動かすという力学的なものをいう.

パワーポイント「ボディメカニクスからの運動
人体の構造と機能を想起させる.

説明
運動の基礎知識として,骨格筋・関節・随意運動の関係を説明する.
随意運動が起こるまでの経路(P.179 図10-1「骨格筋収縮のメカニズム」)を用いて,テキストP178〜180の内容を説明する.
このような運動が,神経系の疾患による運動機能障害・呼吸器系や循環器系の疾患による酸素摂取能力の低下,酸素運搬能力の低下へとつながる.
また筋・骨格系自体の損傷が人間の活動・運動に多大なる影響を与える.

説明だけでなく,自分の身体を使用することで,イメージ化を図る.
具体的には,上腕二頭筋を屈曲させ,再度内容を確認していく.
2.
体位変化とバイタルサイン
説明
活動・運動を行うことは,身体の酸素消費量・エネルギー消費にも影響を与える.
人間が生活していく上での,基本的体位である立位・座位・臥位を例に出して,体位の違いでのバイタルサインの変化を説明する.
テキストP.179 図10-2「臥位から立位になったときの循環動態」

第3
段階
20分
活動・運動のニーズのアセスメント
1.
活動・運動の内容
発問
毎日,生活している中で,皆さんはどのような活動を行っているか?

説明
テキストP.182の表10-1「日常生活動作」からADL(日常生活動作)について説明する.

毎日,行っている活動が,生活するためには重要な意味をもっていることがわかる.
板書
ADL(日常生活動作)
食事動作,入浴動作などの一般的な日常生活で基本となる行動をまとめたもの
テキストP.182の表10-1「日常生活動作」を参照.

パワーポイント「ADL(日常生活動作)
パワーポイント「日常生活動作
2.
活動・運動のニード
発問
今,皆さんは,自分のことは自分でできる.
では,自分のことができるとは,どういうことだと考えるか?

説明
身体が健康であれば,別に気にすることなく動き回ることができる.
テキストP.181〜182を説明し,自分で自分のことができることの大切さを説明する.

3.
活動・運動の客観的指標
説明
具体的な援助を行うために,ADL(日常生活動作)の測定など行う.ADLは,これまで特にリハビリテーション医療プログラムの一環だった.
保健福祉機関等では,独自のものを作成しているところもある.今回は,よく使用されているものを改良した,テキストP.183の図10-5「ADLの評価表」をみて説明する.
活動・運動において,サポートしていくために,問題点を明らかにし,看護診断をあげ具体的な援助を考えていく.

すべてに当てはまるとは限らない.
1.障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)
2.手段的ADLのスケール
4.
活動・運動の障害(看護診断)
説明
身体が何かの原因により,自分では活動・運動ができなくなってしまう.
その要因
1. 身体的状態
1) 昏睡状態・意識障害
2) 四肢の協調運動の欠如
3) 筋肉の痙攣や弛緩
4) 筋力低下・萎縮・拘縮
5) 身体の麻痺
6) 視覚障害
2. 心理的状態
1) 身体的・生理学的な機能障害はみられなくても,抑うつ患者の場合は身体的活動をほとんどしなくなる傾向がある.
2) 過去に転倒した体験から,動くことに対する恐怖が生じて活動・運動が妨げられる.
3) 環境温度や周囲の状況が適切でないと,動こうとする意欲が低下する.
テキストP.184〜185を説明する.
このような原因により活動・運動が制限され,長時間同一体位でいることで,身体に起こりうる影響について説明する.特に,自分の身体の圧(体圧)がどのように影響しているかについて説明を行う.

資料:廃用性症候群について(全身に及ぼす影響)
参考資料作成文献:江本愛子編著.ナースの視点・看護の実践−寝たきりにしない活動と休息.講談社,1995.
板書
褥瘡とは
圧迫による虚血変化が長時間続いてできる組織の壊死,すなわち圧迫壊死である.

説明
活動・運動の意義については,生理的意味をからめて説明する.
同一体位と体圧,褥瘡の関係については,テキストP.181 図10-4「身体各部の重量比と体圧分布」の内容を用いて説明する.

パワーポイント「褥瘡とは
5.
活動・運動を充足させるためのフローチャート
説明
活動や運動が制限されてしまった患者の状況により,個人に合った援助を行うことが大切.具体的には,テキストP.184の図10-6「活動・運動のニーズを充足させるためのフローチャート」を説明する.

第4
段階
30分(20分)
援助の方法の選択
1.
体位変換における留意点
板書
体位変換の留意点
1. 看護者の適正作業域にベッドの高さを調節し,ベッド柵をおろして作業する.
2. 患者の身体を小さくまとめる.
3. 患者の重い部分を分けて移動させる.
4. 患者と看護者の共同作業として行う.
5. 患者の安全・安楽を考慮して無理せずに看護者を確保する.

説明
体位変換の目的を説明する.テキストP.186での体位変換を行う上での基本となる留意点5項目を読み上げ(ボディメカニクスの確認)確認する.

パワーポイント「体位変換の留意点
一つひとつの根拠も確認していく.
次回演習時には,根拠も手順書内に記載するよう説明する.
パワーポイント「資料映像:体位変換(仰臥位から側臥位への一例)
資料映像「人工呼吸器装着患者の体位変換」
2.
さまざまな場面における体位変換の援助
板書
さまざまな場面における体位変換の援助
1. ベッド上方への水平移動
2. ベッド右側への水平移動
3. 仰臥位から側臥位へ(右側臥位)
4. 仰臥位から座位へ(背部の支えが必要)

説明
板書の4項目について,テキストP.187〜190の情報・アセスメント(1)〜(4)を参照し,手順の確認と留意点を根拠も含め説明する.

3.
床上運動
板書
床上運動
1. 大腿四頭筋の筋力維持・増強運動・股関節の運動/足関節底背屈・足指の運動・尖足予防運動/ハムストリングスと下腿三頭筋運動
2. 手関節・手指の運動/頭頸部・肩・肘関節の運動

説明
長期臥床中の心身の機能が低下している高齢者・術後患者は,肺合併症や関節拘縮・筋萎縮による運動障害,褥瘡,深部静脈血栓症,腓骨神経麻痺などを併発することが多く,治療の困難や患者のQOLの低下,社会復帰困難などの影響を及ぼす.
パワーポイント「床上運動
床上運動は,臥床中の患者に対して合併症を予防し,早期離床,セルフケアを可能とするための床上での機能訓練指導を行う重要な役割である.
P.191〜193の情報・アセスメント(5)(6)を参照し,各自,方法・留意点を確認しておく.

演習では行わないため,留意点には,アンダーラインを引く.
4.
立位と歩行
板書
立位と歩行
1. 患者の身体を看護者の手で支える歩行介助
2. 障害による歩行の特徴と歩行介助
3. 歩行補助具の種類と適応

パワーポイント「立位と歩行
説明
移動動作の中では歩行の自立が最終の目標である.
循環器・呼吸器への負荷が最も大きい.
活動耐性低下が考えられる対象者,身体運動性に障害のある対象者は.一人で歩くことは危険なので看護者の援助が必要である.
立位援助の必要性を,テキストP.194にて説明する.
テキストP.194〜196の情報・アセスメント(7)〜(9)を参照し,具体的な援助の写真を見ながら説明する.
留意点: 患者の支え方
患者が転倒しそうになったら
患者に対する看護者の位置
患者の寝衣・履物について

次回演習時には,根拠も手順書内に記載するよう説明する.
5.
移動・移送
1) 車椅子による移動・移送
2) ストレッチャーへの移動・移送
板書
1. 車椅子による移動・移送
1)車椅子への移動
2)車椅子での移送
2. ストレッチャーへの移動・移送
1)ストレッチャーへの移動
2)ストレッチャーでの移送

パワーポイント「移動・移送
(10分)
ビデオ視聴
説明
テキストP.197〜199の情報・アセスメント(10)を参照しながら,手順の確認と留意点,根拠を含め説明する.

説明
手順・留意点・根拠を一通り説明した後に行う.
特に注意する点は,巻き戻して説明する.

車椅子による移動・移送,ストレッチャーへの移動・移送関連のビデオがあれば,視覚的に訴えイメージ化を図る.
ビデオは,希望者に貸し出しする.
まとめ
10分
本時の学習目標の確認
課題
1. 人間の活動・運動の意義,運動が人間に与える影響を再度確認しておくこと.
2. 今までの学習が関連していることが多いため,演習までに必要なところは,各自復習しておく.

人体の構造と機能・ボディメカニクスなど既習科目の復習をする.
予習・復習について
3. 次回の演習に向けて,以下の技術に関する手順書(手順・根拠・留意点)を作成し,演習時に持参する.
1)体位変換の実施
 (1)ベッド上方への水平移動
 (2)ベッド右側への水平移動(看護者1人)
 (3)仰臥位から側臥位へ
 (4)仰臥位から座位へ
2)移動・移送の実施
 (1)車椅子への移動
 (2)車椅子での移送
 (3)ストレッチャーへの移動
 (4)ストレッチャーでの移送
4. 次回の講義までに,テキスト(P.200〜204)を読んでくる.
5. 小テストについて(実施する場合)
次回のはじめに,理解度確認のための小テストを実施することを予告する.