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5分
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板書
学習目標
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1.
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看護の歴史的背景,看護の定義,職業(プロフェッション)および学問としての看護の位置づけについて説明できる.
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2.
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看護の対象の生活機能や生活の質と関連させて,看護の目的を明確化できる.
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3.
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看護教育の多様なレベル(看護教育制度)について説明できる.
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○ |
講義終了まで残し,終了時,学習の理解度を確認する. |
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25分
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発問および指示
○ |
4〜5人のグループをつくり,「それぞれの看護に対して持っているイメージ」について討論する時間をもつ.各グループでまとめて発表させる. |
○ |
学生は自分の持っている体験や家族の入院体験をもとに「看護とは優しさである,白衣の天使である」などのイメージを出してくることが多い.そのイメージを否定はせずに,看護を専門性のある職業としてどうとらえていくのかという導入とする. |
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○ |
論点がずれていたり,あまり発言のないグループには介入をし,目的に沿った討論に導く. |
○ |
各グループの発表に的確にコメントをし,テキストに沿った看護の定義,役割について説明する. |
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板書・説明
○ |
医療と社会
テキストP.2 図1.1-1「医療と社会」を提示する.
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1. |
サービスは良質かつ適切な内容であること. |
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2. |
サービス提供にあたっては,適切な説明を行い,利用者の理解を得るよう努めること. |
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3. |
医療提供施設間の機能の連携と分担および業務の連携に資するため,他の医療機関に紹介し,治療に必要なものに限り情報提供すること. |
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4. |
医療技術の普及および医療の効率的な提供に資するため,当該医療施設の建物および設備を当該医療施設に勤務しない医療の担い手の診療,研究,研修に利用させるよう配慮すること |
○ |
看護学教育
看護師の教育は,保健師助産師看護師法に基づく看護師養成所指定規則で詳細に定められており,また看護師免許という国家資格を得るための試験も,国家試験として国の管理の下に行われている.
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1. |
根拠に基づく看護 |
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2. |
知の創造 |
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3. |
業務の拡大 |
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4. |
訪問看護 |
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5. |
診療報酬 |
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説明
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1. |
根拠に基づく看護
人々に提供される看護(医療)は,一人の看護師(医療職員)の知識や技術の範囲内で行われるものではなく,その時点での学問成果に基づいて判断され,提供されるべきである.
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2. |
知の創造
看護業務の発展のためには,新たな知の創造が不可欠である.これによって,看護業務はさらなる拡大と深化を遂げることになるだろう.
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3. |
業務の拡大
2001(平成13)年9 月の厚生労働省医政局長による行政解釈の変更は,「看護師等による静脈注射の実施は保健師助産師看護師法第5条に規定される診療の補助行為の範疇である」1)としたのである(p.117参照).
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4. |
訪問看護
医療法第1条の2第2項には,医療を提供する場に関する記述の中で,「医療を受ける者の居宅等において」も医療を提供すると記されている.居宅とは住まいであり,利用者が住んでいるところで医療を提供するという考えである.
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5. |
診療報酬
1990年代に入ってからの健康保険法による診療報酬の改正では,外来での看護活動や退院時のサービスにも報酬が得られるようになった.
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板書・説明
説明
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1. |
看護,ケア,ケアリング
看護は,「看(みる)」と「護(まもる)」を合成した語であることから,一般に「見守る」または「看取る」といった意味に解釈されている.
英語ではまた,看護をnursing careとも呼ぶ.ケアとは世話,配慮,気遣いといった意味であり,する者とされる者との相互作用のなかに生じる行為である.ケアは看護の特性を示すものとして,医学的側面を示すキュア(cure,治療)としばしば対比される.
ケアは看護の中心概念として用いられてきた.近年,ケアリングを中心概念とする看護理論が発表されている(レイニンガー,ワトソン).
ワトソンはケアとケアリングを区別し,ケアは看護の具体的行為であり,ケアリングは態度(心の姿勢)であると述べている5 ).つまり,ケアリングとは対象のニーズに応えるだけでなく,対象の立場に立って,ある行為が対象のためになるかどうか(対象の生命や生活の質を高めたり,成長につながるか)まで判断するという看護の特性を顕著に表す概念といえる.
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2. |
看護の実践
国内外の看護専門職団体による看護の定義から,看護に求められている役割,機能を概観してみよう
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1. |
看護の対象は人間であり,新生児(胎児を含む)から高齢者まであらゆるライフステージの人々およびあらゆる健康レベル(死にゆく人々を含む)の人々を含む. |
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2. |
看護は個人,家族および彼らが所属するコミュニティという単位の人間を対象とする. |
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3. |
看護が対象とする人間は身体的,心理・社会的側面を併せもつ統合体または単一体として存在する. |
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4. |
看護は疾患そのものを対象とするのではなく,(疾患をもつ)人間(の反応)に注目する.看護独自の機能は,対象の健康問題に対する反応を査定し,看護診断を行い,ニーズを充足できるよう自立に向けての援助を行うことである. |
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5. |
看護は対象の尊厳を尊重し,自立へ向けて働きかける. |
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6. |
看護は対象との相互作用を通じて人間関係を形成する過程で行われる. |
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7. |
看護は包括的保健医療システムにおける専門職として,他の専門職とともに健康増進,疾病予防,健康回復に力を発揮する. |
○ |
看護は包括的な概念であるが,一般化していえば,「人々が健康的な生活を営み,その人らしく生きることを支援する行為である」といえよう. |
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○ |
看護の役割
前項において,看護は「人々が健康的な生活を営み,その人らしく生きることを支援すること」と述べた.では,この目標を達成するために,看護師は具体的にどのようなことを行うのか,次のケースを例に考えてみよう.
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15分
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説明
○ |
看護過程とは,科学的思考の過程である.この思考過程により,ケアの受け手のニーズおよび問題を把握し,看護計画を立て,ケアを提供し,それが対象にとって効果があったのかどうかを評価する. |
○ |
看護および看護学はこの科学的思考を活用し,看護実践を積み重ねることにより,よりよい看護の発展へつながる(学問)分野であり,ゆえに実践科学といわれる. |
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板書
○ |
実践科学の柱
テキストP.10 図1.1-2「実践科学の柱」を提示する.
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説明
○ |
実践科学は,理論と研究と実践の3本の柱から成るといわれる. |
○ |
理論とは見方や考え方を示す地図のようなものであり,看護師が人々を援助できるように,看護場面で生じる複雑な出来事の関係を整理してくれる. |
○ |
研究とは疑問に答えたり,問題を解決したりするために,組織立った科学的方法を用いて行う系統的な探究である. |
○ |
看護実践の中で,臨床的疑問に関して研究が行われ,その成果を積み重ねることで看護に役に立つ知識や理論が生成される. |
○ |
看護の現場における研究をとおして得られた結果(知識や理論)は,実際にケアの場面で活用(検証)され,さらに新しい知見を得て,精選されたものになる. |
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板書
○ |
看護における多様な技術
テキストP.11 表1.1-3「看護における多様な技術」を提示する.
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説明
○ |
看護は,専門職としての役割を遂行するため,多様な技術を活用している. |
○ |
生活行動への援助技術は単に快適さを得るためでなく,生体のもつ治癒力に科学的に働きかけることのできる技術として確立させることの重要性が指摘されている.すなわち,多忙なときはしなくてもよいケアではなく,疾病回復のために必要不可欠なケアとして位置づけようというのである. |
○ |
たとえば足浴は,足を清潔にするのみでなく,入眠に効果があることが経験的に知られている.体へのケアが,快適さを示す生理学的変化を生じさせること,それによる経済効果をもたらすことなど,看護技術が質の高いケア提供の手段であることをその根拠によって実証していくことが求められる.このことは,次に述べるEBNの考え方と直結している. |
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板書
○ |
EBNの4要素
テキストP.12 図1.1-3「EBNの4要素」を提示する.
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○ |
EBNの看護実践への導入のプロセス |
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1. |
解決すべき問題は何かを明確にする. |
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2. |
文献を探す. |
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3. |
探した文献を批判的に読む(研究の成果として得られたエビデンスがどれだけ信頼できるものであるかどうか判断する). |
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4. |
個々の患者への応用を考える. |
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5. |
アウトカムを評価する. |
説明
○ |
近年,エビデンスに基づいた看護(EBN;evidence-based nursing)を行うことの重要性が指摘されている.エビデンスは証拠または根拠と訳されており,研究により得られた成果であるが,研究成果が現場に活用されることはまだ少ない. |
○ |
ジョンストンによれば,EBNに対する関心は介入による効果と効率の要求,そしてより多くの人に対する説明責任(accountability)を背景にしている.すなわち,医療コストを削減し,患者への説明責任を果たすには,それに応えられるエビデンスを示すことが必要となる. |
○ |
フレミング(Flemming)によると,エビデンスに基づいた看護は, |
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1. |
研究結果からのエビデンス |
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2. |
臨床経験に基づく知識 |
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3. |
患者の意向 |
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4. |
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という四つの要素を考慮して行われる. |
○ |
この四つの要素は一つの中心に向かっており,この中心にあるのが患者にとっての成果であるという.すなわち,患者(対象者)に質の高い看護を提供するには,最新の研究成果(エビデンス)を実践に活用することが不可欠であるとしている. |
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15分
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板書
説明
○ |
現在の看護教育制度には,看護師,保健師,助産師の資格を得るためのいくつかの方法が用意されている. |
○ |
看護師資格を得るためには, |
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1. |
4年間の大学教育 |
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2. |
3年間または2年間(進学課程)の短期大学教育 |
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3. |
3年間または2年間(進学課程)の専門学校で行う看護師養成所教育 |
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4. |
5年間の高校の衛生看護科や専攻科教育 |
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を受けて必要単位を取得後,年1回の看護師国家試験に合格しなければならない. |
○ |
准看護師資格は中学卒業後2年間の准看護師のための専門学校または3年間の高校衛生看護科での教育を受け,都道府県知事による准看護師試験に合格した者に与えられる. |
○ |
すでに准看護師の資格をもつ者で,3年以上の業務経験を有する者または高校を卒業し准看護師の資格をもつ者は,2年間の短期大学や2年間の高校の専攻科,2年間の専門学校での教育を受けた後,国家試験に合格すれば,看護師資格を得ることができる. |
○ |
保健師,助産師に関しては,看護師国家試験に合格し,保健師になるのに必要な学科を6カ月以上修めた者または助産に関する学科を6カ月以上修めた者が,保健師国家試験,助産師国家試験を受けることができる. |
○ |
これらの看護師,保健師,助産師資格については,文部科学省令・厚生労働省令で定められている基準に基づき,昭和23年に公布された保健師助産師看護師法(保助看法)に述べられている. |
○ |
テキストP.120を参照する. |
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説明
○ |
保助看法は,種々の教育課程を卒業した者に看護師国家試験の受験資格を与えられるしくみを支えており,そのため看護教育は大学教育から高校教育まで多岐にわたる方法で行われている. |
○ |
看護専門学校のような3年課程の看護師養成所では,看護師免許を得ることが目的であるため,主に保助看法指定規則に従って教育が実施される. |
○ |
一方,大学や短期大学のように学校教育法の第1条で「学校」といわれる施設で行われる教育は,国家試験による看護師免許を得る目的があれば,保助看法指定規則を満たす教育課程とする必要があるが,基本的には大学教育の教育課程は大学設置基準によりその内容が規定される. |
○ |
保助看法指定規則に則って設定される教育課程に比べると,大学設置基準により設定される教育課程は,一般教育科目の履修単位が多く,自然科学,人文科学,社会科学を均一に取ることができるようになっている. |
○ |
一般教育の重視は,専門教育科目に入る前に基本的な知識・理論を身に付け,画一化されない柔軟な思考力と広い人間性を培うことを意図したものである. |
○ |
また,学校教育法に規定される大学教育,短期大学教育,専修学校教育の目的をみると,それぞれの教育課程でどのような能力を身につけることができるかが示されている. |
○ |
学校教育法の第1条には「学校とは,小学校,中学校,高等学校,中等教育学校,大学,高等専門学校,特別支援学校および幼稚園とする」と述べられている. |
○ |
大学教育
基本的かつ幅広い知識を供給するとともに,さらにその知識を探究し応用する能力が育成されることになる.大学には学問の知識体系を創り出し,それを科学的に検証し,知識,学問を発展させていくプロセスに寄与できる人材を育てる点に第一義的役割がある.
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○ |
短期大学教育
知識を学び探究する点においては大学と同様であるが,知識を職業や生活にどのように生かすことができるかという観点が重視される.実践レベルで必要とされる知識の開発力,応用力を養うことが教育の目的となっている.
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○ |
専修学校教育
学校教育法の第1条で指定された学校ではない教育施設で行われる.職業もしくは実際生活に必要な能力を育成することが中心であり,そのために専修学校では中学校卒業以上を入学資格とする高等課程や高校卒業以上を入学資格とする専門課程があり,それぞれに関心ある領域の実践的側面の能力を身につけることができる教育課程,となっている.
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20分
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板書
説明
○ |
日本看護協会(Japanese Nursing Association)は,1946(昭和21)年に保健師,助産師,看護師,准看護師によって設立された職能団体であり,47都道府県看護協会が各地方において会員組織をもち,連携活動を行っている. |
○ |
全国58万人の会員(2007年度)をもつ日本最大の職能団体といわれている. |
○ |
事業内容は,看護の質の改善・向上,健康政策の提言とその実現,訪問看護の推進,専門看護師・認定看護師・認定看護管理者の教育と認定,継続教育の推進,日本看護学会などの研究の振興,調査研究,保健医療福祉の連携促進,国際交流,看護師の人材確保・就業促進などである. |
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説明
○ |
日本看護系大学協議会(Japan Association of Nursing Programs in University)は,「看護系大学の相互の連携と協力によって,学術と教育の発展に寄与し,看護学高等教育機関の使命を達成すること」を目的に1976(昭和51)年7月に発足した. |
○ |
国・公・私立の4年制大学において看護学教育を行っている大学を会員とし,2008年度の会員校は168校(大学校を含む)である. |
○ |
事業内容は,看護学研究の推進,看護学教育の充実,情報交換と情報発信,対外交渉,専門看護師教育課程の認定の実施と推進である. |
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1. |
看護学研究の推進
看護学教育の充実に関しては,1996(平成8)年度には看護大学への入学者規制の緩和策として,専門学校出身者の受け入れが提言され,また編入学生に対しても入学規制が緩められる体制が検討されるようになった.
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2. |
専門看護師教育課程の認定の実施と推進
国内外における看護の専門分化の動きを考慮し,専門看護師(CNS;certified nurse specialist)の教育課程は大学院に置かれるのが望ましいという観点から,1994(平成6)年に大学院修士課程での2年間の教育課程を修了した者に認定試験を受ける資格を与える制度が設立された.
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○ |
本協議会は,専門看護師教育課程の認定体制を作り上げ,専門看護分野の特定を行う機関としても役割を果たしている. |
○ |
2008年12月現在,10分野で計304人の専門看護師が登録されている. |
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説明
○ |
国際看護師協会(International Council of Nurses;ICN)は,各国の看護師協会からなる組織で,120カ国以上の国々の看護師が会員となっている.1899(明治32)年に設立された世界最大の国際的保健専門職団体である. |
○ |
ICNを創立した看護師たちは,女性に関する国際的動向,社会的権利,ヘルスケア改革への関心が高まった19世紀末葉という時代を背景に,専門職としての看護の組織化に乗り出した.看護師の世界にまたがる連携という思想に賛同する看護師数は次第に増え,4年ごとに開催されるICN大会への参加者数も増していった. |
○ |
現在では看護師により看護師のために運営される組織として,人々に質の高い看護,世界的な保健政策,看護知識の発展,専門職として有能かつ満足なマンパワーを保証する努力を行っている.看護実践,教育,管理,研究,社会経済福祉のためのICNガイドラインや方針は,看護政策の基盤として世界的に受け入れられている. |
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10分
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課題
1. |
下記の点を確認する
1. |
看護の歴史的背景,看護の定義,職業(プロフェッション)および学問としての看護の位置づけについて説明できる. |
2. |
看護の対象の生活機能や生活の質と関連させて,看護の目的を明確化できる. |
3. |
看護教育の多様なレベル(看護教育制度)について説明できる. |
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2. |
参考文献の紹介 |
3. |
次回の授業範囲,テキストの(P.18〜71)を読んでくるよう指示する. |
4. |
小テストについて(実施する場合)
次回の授業のはじめに,理解度確認のための小テストを実施することを予告する. |
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